九州厚生局との懇談

九州厚生局との懇談
コロナ禍での個別指導等について意見交換

2023年1月19日に行われた九州厚生局(以下「厚生局」)と保団連九州ブロック協議会(以下「九州ブロック」)との懇談会で、九州ブロックから出した質問・要望についての回答である。今回の記事は、既に5月号4面で掲載した概要版の詳細となる。なお、この懇談内容の記事は、厚生局の確認を得ている。

以下、九州ブロックからの質問に対する厚生局の回答と、関連する質疑応答などの詳細を掲載する。

<事前質問>

1.『高点数による個別指導』の結果が「概ね妥当」の場合、次回の『高点数による個別指導』の選定対象から除外することについて

【九州ブロック】

平成7年12月22日厚生省通知「指導大綱における保険医療機関等に対する指導の取扱いについて」では、『指導大綱(平成7年12月22日付保発第117号)による指導の実施に当たっては、次の事項に留意のうえ実施されたい』と示されております。その事項の中の「3.個別指導について」の(1)には、次のように示されております。

指導大綱第4の4の(1)の⑤及び(2)の③に該当する高点数保険医療機関等であって、過去にも同項に該当するとして個別指導を受けたもののうち、その直近の個別指導の結果、指導後の措置が「概ね妥当」であり、かつ、現在においても妥当適切な状態が継続していると認められるもの、又は「経過観察」であり、その後改善が図られていると認められるものについては、都道府県の社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に意見を聴いたうえで個別指導の対象から除外することができるものとする。

つきましては、下記の保険医療機関については、支払基金等に意見を聴いたうえで、個別指導の対象から除外していただけないでしょうか。

①直近の『高点数による個別指導』の結果が「概ね妥当」でありかつ、現在においても妥当適切な状態が継続していると認められる保険医療機関。

②直近の『高点数による個別指導』の結果が「経過観察」であり、その後改善が図られていると認められる保険医療機関。

【厚生局】

現時点では「妥当適切な状態が継続していると認められる」「その後改善が図られていると認められる」ということについて、明確な判断基準が設けられていないため、これを適用した選定は難しいと考えます。

【九州ブロック】

過去に判断基準を設けることを検討されているのでしょうか。また、個別指導除外対象が示された経緯について教えてください。

【厚生局】

当局では、判断基準を設けることについてこれまで検討がなされたのか否かは把握しておりません。経緯につきましても存じておりません。ただし、経過観察中、明らかに指摘事項の改善が認められない場合などは、改めて指導の必要性が生じることもあり得ます。その判断は個別の状況を総合的に勘案することとなります。

 

2.自院のレセプト1件当たりの平均点数及び医科の類型区分に関する照会状況について

【九州ブロック】

医療機関の開設者又は管理者本人であれば、電話により自院のレセプト1件当たりの平均点数や医科の場合は類型区分を確認することができますが、九州各県事務所への照会状況(件数など)を教えていただけますでしょうか。

また、医科の類型区分について、確認の結果、貴局が管理している類型区分と医療機関側の認識が異なる事例も一定数あるのでしょうか。

【厚生局】

各県事務所等へ類型区分に関する照会はありますが、本局に件数を報告する事務処理となっていないため、件数等の照会状況は把握しておりません。医科の類型区分につきましては、開設者等が認識している主たる診療科と類型区分に認識の相違がある場合は、保険医療機関に対し変更届の提出をお願いしています。

 

3.「保険医療機関等電子申請・届出等システム」の今後の見通しについて

【九州ブロック】

2022年3月31日より、「保険医療機関等電子申請・届出等システム」の運用が開始され、書面による提出をしていた一部については、このシステムにより電子申請が可能となっておりますが、今後、全ての申請・届出がオンラインで可能になる予定なのでしょうか。それとも書面での申請・届出が必要なものは一定数残ることも考えられるのでしょうか。現時点での見通しがお分かりでしたらご教授ください。また、九州各県の保険医療機関において、登録されている割合はどのくらいなのでしょうか。

【厚生局】

順次オンライン化等の検討及び具体化を進めていく予定であると承知していますが、現時点において書面での申請・届出が残るかは未定であると聞いています。九州各県の保険医療機関における電子申請の登録割合は把握しておりません。

 

4.個別指導日程の延期時の対応について

【九州ブロック】

新型コロナウイルス感染症の影響により、予定されていた個別指導が延期されるケースがありますが、その場合、当初年間スケジュールで予定している日程とは別に新たに日程を設けて実施しているのでしょうか。

また、沖縄では今年に入り個別指導が4回の延期があったケースがあり、被指導医療機関に多大な負担が生じていることから、個別指導の延期では無く、指導時間の短縮等の感染対策を講じた上で実施いただけないでしょうか。

【厚生局】

新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた個別指導を延期した場合には、各県事務所等の実情に応じて、年間スケジュールの中で実施する場合もあれば、新たに日程を設けて実施する場合もあります。延期により実施が遅れている個別指導につきましては、関係団体と協議しながら、早期実施に努めてまいります。

【九州ブロック】

今後、オンラインでの個別指導等の実施は検討されているのでしょうか。

【厚生局】

個別指導は全国統一した実施方法に基づいており、オンラインでの個別指導の実施の予定につきましては現在のところ伺っておりません。

 

5.施設基準届出受理通知書を速やかに送付してください

【九州ブロック】

2022年4月診療報酬改定において、各医療機関では4月1日からの算定のため4月20日までに届出を行いましたが、鹿児島県では多くの医療機関から、5月に入っても、受理状況の連絡が来ず、診療報酬請求に混乱が生じたとの声が寄せられました。中には、貴局鹿児島事務所へ確認を行うと「とりあえず請求してください。受理されないようでしたら査定されます」という一方的で乱暴な回答であったと怒りの声も寄せられました。

改めて貴局における施設基準届出受理状況を4月分診療報酬請求に影響がないよう、医療機関への速やかな結果通知を求めると共に、今回の件に関するご認識と今後の対応についてお考えをお聞かせください。

【厚生局】

診療報酬改定に伴う施設基準の届出は毎回4月の提出期限までに数多く寄せられています。鹿児島事務所においては、早期に審査を行い受理通知が発出できるよう全所体制で取り組んでいますが、今回、大量の届出があったことにより審査・受理等の事務処理の遅れが生じました。今後は同様なことが生じないよう早期審査、受理等に向けた体制の確保に努めてまいります。

【九州厚生局】

令和4年度診療報酬改定において、外来後発医薬品使用体制加算の施設基準における実績要件の引上げに伴い再届出が必要となりましたが、8月まで受理通知書が届かず、その間診療報酬請求ができなかった事例もございます。今後は迅速な送付をお願いします。

 

6.新規個別指導の会場として県歯科医師会館を使用すると決めた経緯の説明をお願いします

【九州ブロック】

福岡県歯科医師会の機関誌「歯界時報」2022年4月号・5月号には、2022年3月22日の貴局と福岡県歯科医師会との打ち合わせ会で、福岡県歯科医師会が県歯科医師会館を利用して個別指導を行ってはどうかと提案し、貴局も前向きに検討しているとの記載があります。

個別指導は、全ての保険医療機関を対象とするものであり、歯科医師会の会員・非会員という区分に基づいて異なる取扱いが行われる余地を許容する法律上の根拠は存在しません。むしろ、厚労省保険局医療課医療指導監査室が出している「医療指導監査業務等実施要領」(指導編)には「都道府県医師会等の会議室は、原則として使用しない。」と記されています。この要領に照らして、どのような経緯で県歯科医師会館を使用するとの決定に至ったのか、説明をお願いします。

【厚生局】

令和4年度の歯科の新規個別指導は、令和3年度に新規開設した保険医療機関に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響による未実施の繰り越し分・延期分とあわせて実施する必要性を踏まえ、感染防止対策を講じた上で、指導を計画的に実施するために必要な広さの会場確保に努めました。しかしながら、年度末になりましても年間の指導会場の確保が困難な状況が続いていたため令和4年度においては、条件を満たす県歯科医師会館の会議室を使用しての実施となりました。当該貸会議室は、他団体への貸与実績や料金体系も明確にされており、新規個別指導を円滑に実施するため今年度に限って指導会場としたものです。この件は例外的な取扱いとして本省にも相談の上、実施しております。なお、会場の使用に当たっては正規の料金体系に基づいて借用しています。

 

<要望事項>

1.コロナ対策に積極的に協力した医療機関が集団的個別指導に選定されないようにしてください(厚労省への要望と各事務所の選定委員会で対象から外すことも含めて)

【九州ブロック】

新型コロナウイルス感染症の流行以降、医療機関は国民の命を守るため、政府や行政の要請に応じて「診療・検査医療機関(発熱外来)」の指定を受けるなど、新型コロナウイルス感染症への対応に積極的に協力してきました。感染症への対応には、厳重な感染対策が欠かせません。アルコールやPPEなど消耗品のほか施設設備の改修に至るまで、医療機関ではさまざまな対策を講じ、政府も各種支援金のほか診療報酬上の特例点数を設けるなどの措置をとってきました。経費の補填として、診療報酬上の特例点数は確かに貴重な収入です。ですが一方で、これら特例点数を算定したがゆえに平均点数が押し上げられたケースが見られたのも事実です。なかには、県の要請に応じて日曜祝日の発熱外来に積極的に協力した結果、平均点数が一気にあがった診療所もありました。問題は、平均点数の跳ね上がりが、集団的個別指導に直結することにあります。新型コロナウイルス感染症という国が最優先で取り組んだ施策に協力した結果、「平均点数が高いことを認識させ、保険診療に対する理解を一層深めさせる」(指導大綱)ための集団的個別指導に選定されるのはいかがなものでしょうか。高点数になり集団的個別指導に選定されることを回避しようと、医療機関が萎縮診療に陥ったり、国の最優先施策である感染症対策への協力を躊躇することのないようにしてください。

【厚生局】

集団的個別指導の対象医療機関は、指導大綱に基づき、全国統一の基準により選定しています。当局独自の基準で選定することはできませんが、このようなご意見があったことを本省に伝えます。

【九州ブロック】

今後様々な医療制度が充実していく中で、かかりつけ医制度等、一人の患者に対し複数の疾患を診療していくと、当然一人当たりの診療報酬点数も高くなります。高点数を理由とした個別指導に選定されると、萎縮診療につながる医療機関も出てくると思います。高点数を理由とした選定を早期に見直して欲しいとの要望を厚労省に伝えていただきますようお願いします。

 

2.令和4年度の個別指導、新規個別指導の指導対象レセプトには、コロナ診療の公費負担分が含まれているか

【九州ブロック】

平均点数が上位30位までの福岡県の医療機関(内科)では、コロナ発生前後で比較をするとコロナ後は点数が高くなっております。指導対象レセプトにコロナ診療分も含まれているのでしょうか。含まれているとすれば今後の集団的個別指導等の選定に用いる平均点数の算出に使用するレセプトも同様にコロナ診療分が含まれるのでしょうか。

【厚生局】

指導対象レセプトは、コロナに限らず公費併用レセプトも含まれる場合があります。また、平均点数を算出する際のレセプトにコロナ診療分が含まれるか否かについて、当局では把握していません。

【九州ブロック】

コロナ診療に関して、発熱外来を行っている医療機関は点数が高くなりますので、コロナ診療分のレセプトは指導の対象から除外していただきたいと思います。また、コロナ診療にあたり、感染対策を講じた上での診療は通常のカルテ記載と勝手が違う上、臨時的な取扱いも多く出されているため、臨時的取扱いに関するカルテ記載の不備を厳しく指導しないようご配慮いただきたく思います。

 

3.各県事務所における問い合わせ時の対応について

【九州ブロック】

現在、自院の平均点数は各県事務所に照会すれば確認が可能です。そのような中、会員医療機関より「本日は歯科指導医療官が不在なので『明日連絡してほしい』という対応が行われた」との情報が寄せられました。必要なのは管理者の本人確認ですので県事務所の職員であれば対応可能だと思います。各県事務所に対する周知徹底をお願いします。

保険医協会より、施設基準に関する問い合わせを県事務所に行ったところ、2カ月回答がありませんでした。診療報酬請求や人員管理にかかわることですので、時間を要するのであればその旨を事前に伝えていただくなどの対応も必要だと思います。

医療機関に対する回答も時間を要していることを聞き及んでいます。各県事務所に対する指導をお願いします。

【厚生局】

平均点数の照会は、各県事務所等の職員で対応可能ですので、今後同様のことが生じないよう各県事務所等へ周知徹底を図ります。また、疑義照会への回答につきましても早期の回答に努めるなど、引き続き適切な対応に向けて各県事務所等へ周知徹底を図ります。

 

4.個別指導の選定における類型区分について

【九州ブロック】

昨今、診療報酬改定が行われる毎に、歯科診療所において、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、か強診)とそれ以外の歯科診療所との平均点数の格差が広がっています。個別指導において、従来の高点数による指導対象医療機関の選定が継続されると、今後はか強診の診療所のみが選定されることになりかねません。

か強診の診療所は国の施策に従い、感染症の広がりの中でさらにその重要性が増している国民のかかりつけの歯科診療所としての機能を維持すべく、人材を育成し、機材をそろえ、研修を重ねています。その結果として高点数になっている診療所が優先して指導対象として選ばれるのはいかがなものでしょうか。

高点数による個別指導対象医療機関の選定の是非は、今後論じられるべきでありますが、その前に、か強診の歯科診療所とそれ以外の歯科診療所を区別して、それぞれにレセプト1件当たりの平均点数が都道府県の平均点数の1.2倍を超えるものを個別指導対象として選定していただくよう要望いたします。

【厚生局】

ご意見があったことを本省へ伝えます。

【九州ブロック】

2018年の第10回懇談時に、歯科の類型区分について訪問診療の有無を考慮した区分を設けていただくよう本省へ要望していましたが、本省では策定が進んでいるのでしょうか。

【厚生局】

ご指摘のご要望に係る本省での議論の進展につきましては、当局では把握しておりません。

 

5.平均点数の算出における歯科での補正について

【九州ブロック】

医科では院内処方の医療機関と院外処方の医療機関との間で平均点数が補正されますが、歯科では補正が設けられておりません。最近は抗生剤や抗菌剤、カンジダ症治療薬など薬価の高い薬剤もあり、その分が上乗せされると、院内処方の歯科医療機関と院外処方の歯科医療機関との間で平均点数に格差が生じます。第12回懇談時にも要望として上げさせていただきましたが、歯科での補正についてその後、進展がございましたか。

【厚生局】

進展につきましては、当局では存じておりません。薬価の高い薬剤が平均点数に与える影響についてもご意見として本省へ伝えます。